カリフォルニアのArcataから参加された山田幸一さんからの
感想が届きましたので紹介させていただきます。
JBATS & PBATS主催
Athletic Trainer Internship Program 2010 を終えて
あらかじめシアトルマリナーズに配属される旨をJBATSからお知らせいただいたので、インターンシップが始まるまでにやっておこうと思ったことは、できるかぎり選手のことを調べることでした。移籍してきた選手も含めて、名前とポジションを頭に入れておけば、コミュニケーションの面でも実際にコンディショニングに当たるうえでも選手との距離をいち早く詰められますから。しかしながら、ロースター40人はある程度把握していったのですが、実際にはマイナーリーグを含めた63人の選手がスプリングトレーニングに参加していたので、そこからまた名前と顔を覚えていくのにはひと苦労しました。
2月28日の実習初日は、ヘッドトレーナーのグリフィン氏から朝のグラウンドミーティングで選手全員に我々のことを紹介していただいたのですが、毎年日本人学生トレーナーがこの時期に来ることを知っている選手やコーチもいたようで、そういった意味では受け入れる側にも余裕があるというか、温かい雰囲気があって、こちらもすんなりと入っていけたような気がします。初日は概ね見学で終わりましたが、2日目からは、アイスパック作り、ドリンク類の補充、ホットバス&コールドバスの清掃などに加えて、選手に対する電気治療機によるトリートメント、ホットパックやアイスパックの装着、ストレッチング、マッサージなども少しずつやらせていただきました。全63選手のうち、アスレチックトレーニングルームにやってくるのは、メジャーリーガーを中心に毎日約20人前後で、練習が始まる一時間前あたりが一番込み合うので、そこで少しでも戦力になるよう心がけました。ストレッチングとPNFには一定のルーティーンがあるので、グリフィン氏に説明を受けながら、空いた時間に練習させてもらいました。2週間という短い実習期間の中で選手に触れるようになるためには、やはり練習して自信をつけるしかないでしょう。プロの選手に触れられるチャンスというのは、そうそう訪れるものではありません。アシスタントトレーナーの森本氏いわく、歴代の日本人学生トレーナーは寝る間を惜しんで明け方までマニュアル手技の練習をしていたそうです。実際に触れてみてわかることも多いです。メジャーリーガーでもフィジカル面は様々で、誰一人として万全の状態ではないといっても過言ではありません。多くの選手がそれぞれに問題を抱えながらプレーしているのです。マリナーズのアスレチックトレーナーの仕事を間近で見て、お客さんとして観戦している分には見えてこない部分、その部分に的確にアプローチし、コンディションを整えていくのがプロのアスレチックトレーナーの重要な仕事であると感じました。
テーピングに関してですが、マリナーズはキネシオテープを多用していました。主に筋腱等軟部組織の損傷、打撲による腫脹、膝蓋大腿関節障害に効果を発揮していました。何人かの選手が捻挫の予防目的で足関節にテープを巻いていましたが、ヒールロックはホワイトテープでは巻かないという点がベースボール的であると感じました。ゴルフなどもそうだと思うのですが、ベースボールにおいてもテーピングがプレーにかなり影響する部分もあるのではと常々考えているので、そういった意味でも、どのテープをどのように使用していくかということは今後の課題にしたいと思いました。
オープン戦が3月3日から始まりました。暑い日には30°近くまで気温が上がるので、試合中の水分補給は欠かせません。ドライな気候なので、思った以上に水分が身体から奪われていきます。意外なことにマリナーズの選手の多くがスポーツドリンク(ゲータレード)を好まず、ウォーターを口にしていました。ある選手いわく、スポーツドリンクの不評の原因は、マズイそして甘い、でした。もちろんウォーターを口にすることが悪いわけではありませんが、このあたりも改良の余地があるかなと感じました。逆にマズイと言いながらも自分でゲータレードを薄めて飲んでいる選手などは、水分補給に関して意識が高いと思いました。
3月中旬までのオープン戦では主力選手が5回までプレーし、メジャー登録枠ボーダーラインあたりの選手がそのあと出場します。ボーダーライン上の選手にとっては一球一打が生死を分けますから本当に必死です。その気持ちがひしひしと伝わってくるので、こちらも身が引き締まる思いでした。最初の63人が私たちのインターンが終わるころには40人ちょっとになっていましたし、開幕メンバーは25人に絞られるので本当に厳しい世界です。
オープン戦で登板した投手は公式戦ならばベンチの中ですぐにアイシングをしている風景をみますが、スプリングトレーニング中はクラブハウスへ戻ってから行っていました。実際にはすぐにアイシングするよりもコンディショニングトレーニングをする選手が多かったです。軽いウェイトのトレーニング、チューブトレーニング、PNF、下半身のストレッチ&マッサージなど。とくにレギュラーシーズンでは登板数の多くなる中継ぎ選手にアイシングを避ける傾向がありました。軽度のトレーニングによる疲労回復促進を優先させているのでしょう。しかし、投球後のコンディショニングについては選手個々のルーティーンにある程度任せていました。こうするんだというチームのコンディショニングに対する方針があった方がいいような気もしますが、メジャーリーガーに対しては難しいところなのでしょうか。
選手やスタッフのみなさんとの気心が知れるようになってきた頃に、このインターンの終わりがやってきました。まだまだ未熟な技術であったのに、快くトリートメントさせていただいた選手のみなさんには本当に感謝しています。メジャーリーグというベースボールの世界最高峰にあるリーグの中で、アスリートとしても人としても素晴らしい選手たち、ワカマツ監督をはじめ選手と一緒になって身体を動かし、チームの勝利のために戦略を練る首脳陣たち、選手が気持ち良くプレーできるようにと裏方となって夜遅くまで働いていたクラブハウスのスタッフのみなさん、シアトルから駆け付けていた専門医のみなさん、毎朝五時半からストレングストレーニングを指導してくださったS & Cコーチのクリフォード、そしてヘッドトレーナーのRiグリフィン氏をはじめアシスタントトレーナーのノディーン、森本氏、マイナーリーグでアスレチックトレーニングを統括するクラリツィオ氏から教えていただいたものは何事にもかえがたい貴重なものです。いつかまたきっと、自分がもっと成長したうえで、何らかの形で恩返しができればと考えています。
最後になりましたが、このような素晴らしい機会を与えてくださったJBATS、PBATSならびに関係各位の皆様に心よりお礼申し上げます。
日本でもアメリカでもメジャーリーグのチームで実習したいと思う学生さんは本当にたくさんおられると思います。ですからこれから先もインターンシッププログラムを継続し、プロの世界を見るチャンスを我々に与えてください。
ありがとうございました。
山田 幸一
ハンボルト州立大学
posted by JBATS事務局 at 11:59|
参加者より
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